日本最古の石仏の寺
大谷石の採掘で名高い、宇都宮市の大谷地域。
その中にあって古くから信仰を集めているのが大谷寺である。
一般に「大谷観音」の名で知られる本尊は、岩壁に彫られた千手観音菩薩。
弘仁元年(810)に弘法大師によって彫られたものと伝えられている。
その当時は金箔仕上げで、金色に輝いていたという。
鎌倉時代に坂東三十三箇所第19番の霊場に定められ、多くの人々の信仰を集めてきた。
堂内岩壁面には、合計十体の石仏が彫られている。
これらは日本の石仏彫刻の中でも、もっとも優秀な技巧を極めたものとして、
昭和29年(1954) に国の特別史跡に指定された。
さらに 昭和36年(1961)には重要文化財の指定を受けている。
日本で最初の二重指定である。
同寺の縁起は弘仁元年(810)。
弘法大師が東国巡礼の折、住民から毒蛇の住む谷の話を聞き、これを退治した後、
人々が谷に入ると岩山に千手観音が光り輝き、その脇侍に不動明王と毘沙門天が彫ってあり、
三尊の光明が山谷を一面金色に染めていたという伝説が残っている。
また同寺の門前には高さ約27メートルの平和観音像がある。
世界平和を祈念して約6年がかりで彫られた。総手彫りである。
昭和31年(1956)に開眼、信仰とともに観光においても人々に親しまれる存在となっている。
また寺のある御止山は国の名勝である。
発掘調査の際に発見された、約1万1千年前の縄文時代の人骨も
他のさまざまな寺宝とともに、宝物館に展示されている。