千灯の明りがともる信仰の寺
小山市市街地にある興法寺は、寺伝によれば
嘉祥2年(849)に慈覚大師円仁が都賀郡「室の八島」に下向の際、
小山荘に一宇を建立して「妙楽院」と号したのが始まりという。
その後、天慶3年(940)に藤原秀郷が小山城を築城すると城内に移転し
「徳王山妙楽院興法寺」と号したと伝えられる。
一説には、小山城主の帰依を受けた天台僧興海の中興開山ともされる。
慶安2年(1640)8月、徳川家光より朱印で九石の寺領が寄進され、
寺中山林竹木諸役なども免除された。この朱印状は現在も残っている。
天和3年(1683)に火災のため堂宇を焼失したが、
貞享4年(1687)に覚永法師によって再建された。
第57世貫首日光輪王寺宮門跡公弁法親王(後西院帝第6皇子)が、しばしば休泊した所として知られ、
元禄8年(1695)には阿弥陀三尊像厨子、比叡山中興の慈恵大師良源像厨子、
当山施餓鬼会本尊地蔵菩薩像厨子、門額などを寄進したといわれる。
また、先に記した天和3年の焼失後の再建も、
公弁法親王の助力によるものと伝えられている。
かつては毎年7月22日~23日に聖霊会(法界大施餓鬼会)があり、
老若の参詣が多かったという。
文化5年(1808)にも類焼したが、
明治18年(1885)に滋湛法印が再建した(山門は焼失を免れている)。
8月23日には「精霊千灯供養会」も開かれている。
千の灯が参道の両側に並べられ、幻想的な信仰の世界を現出させる。
また参道の桜並木はじめ、境内の花木も名高い。