栃木市の歴史の街並みにある寺
定願寺は縁起書によれば、伝教大師が弘仁6年(815)に
東国を巡礼された折に開基されたと伝えられている。
その時、一夜の宿を求めた夫婦に阿弥陀仏を彫って与えたという伝承もあり、
山号の「順禮」は夫、院号の「修徳」は妻の名前と言われている。
また、弘仁11年(820)に弘法大師がこの地を訪れた際、
阿弥陀如来像を刻んで、伝教大師の仏像を胎内仏としたとされる。
これが現在の本尊である。
以後、不断念仏堂とも呼ばれている。
その後、永禄6年(1563)に皆川城主・皆川俊宗により
旧大平町川連より現地に移転された。
現在の本堂は、寛政9年(1797)に再建されたものである。
本尊の阿弥陀如来は寄木造で、秘仏(非公開)である。
以前、修復のために解体した際、
中から享禄元年(15 28)以前に造られたことを示す銘が発見されており、
寺の歴史も少なくとも室町時代以前より地域の信仰を支え、
栄えていたことがうかがわれる。
同寺の山門の彫刻は「カゴ彫」と言われ、
一木をくり抜いたみごとなもので、
日光宮御成御門と伝えられており市の文化財に指定されている。
同寺には他にも不動堂の彫刻や、
佐野天明鋳物の梵鐘が市文化財に指定されている。
また不動堂は、もともとは檀家の家にあったものを昭和初期に移築した。
一説には伊達政宗に求められた建物ともある。
正確な年代は不明だが、歴史を感じさせる建物である。
同寺は栃木市の中心市街地にあるが、寺の佇まいは閑静で、
緑豊かな境内と歴史を感じさせる建物は、
檀家の信仰をゆったりと受け入れている。