市街地の信仰のよりどころ
宝亀元年(770)、良海上人の開基と伝えられる延命寺。
その後1200年以上にわたり、信徒の信仰を守り育ててきた。
現在は栃木市の市街地に位置し、近隣には図書館や文化会館、
栃木南中学校など文教施設がある。
また徒歩1分のところに栃木簡易裁判所がある。
県道11号からも近く、商家も多く立ち並んでいる。
境内に立つと、市街地とは思えないほどの落ち着きがある。
佇まいはあくまで慎ましく、
檀家の信仰を第一に守り育てている姿は、創建より変わらないと感じさせる。
明治42年(1909)に旭町一帯を大火が襲い、約300軒が焼失した。
その際、同寺も罹災した。
知らせを受け集まった檀家は、
本尊や地蔵尊、古文書などをそれぞれ抱えて運び出し、
寺の前を流れる川に飛び込んで、火から守ったという。
同寺と檀家との絆の強さを物語るエピソードである。
栃木市は現在「蔵の街」として知られ、
古くからの蔵が数多く現存しているが、
もともとは大火から財産を守るための工夫だったという。