地元農家の菩提所
栃木市の市街地は商人の町として発展してきたが、
廣泉寺のある沼和田町は農村地帯で、檀家も農家が多い。
明治13年(1880)に本堂を全焼し、それ以前の記録の一切を失ったため、
寺の歴史には不明な点が多い。
しかし、境内より室町時代の文明元年(1469)の板碑が発掘されたことで、
当時すでにこの地に同寺があったことが分かっている。
焼失前の本堂は南北2間という大きな建物で、
境内には阿弥陀堂や不動堂もあったが、時の経過とともに消失してしまった。
現在残っているのは、本堂に安置されている本尊釈迦如来と
向かって左脇の阿弥陀如来坐像だけとなってしまった。
この阿弥陀如来は、その昔盗難にあい
巴波川のほとりに投げ捨てられていたものを檀信徒に発見され、
再び同寺に奉納されたという。
発見の際、雑草の茂みから
「沼和田恋しい、沼和田恋しい」という声が聞こえたとも伝えられ、
盗まれた時も盗人がこの声を聞き、
恐ろしくなって投げ捨てていったのだろうと言われている。
また平成25年(2013)2月には永代供養墓も完成している。